陽炎型14番艦「谷風」——諸元と全戦歴・真珠湾からタウイタウイ湾口まで

陽炎型 · 14番艦 · 第十七駆逐隊
TANIKAZE 谷風
単艦で敵機を引き受け、艦隊を救った艦

陽炎型駆逐艦14番艦。藤永田造船所で建造され、1941年4月竣工。ミッドウェー海戦では単艦で空母「飛龍」の生存者救援に向かい、敵機を一身に引き受けて艦隊を守った。クラ湾夜戦では米軽巡「ヘレナ」撃沈にも貢献。1944年6月9日、タウイタウイ湾口で米潜水艦ハーダーの雷撃を受け轟沈した。

SPEC
基本諸元サマリー
TYPE
陽炎型 14番艦
DISPLACEMENT
2,033 t
MAX SPEED
35.0 kt
MAIN GUN
12.7cm × 6
TORPEDO
61cm × 8射線
FATE
1944.6.9 戦没
艦名谷風(たにかぜ) ※初代・江風型「谷風」に続く2代目
艦型・番艦陽炎型駆逐艦 14番艦(仮称第30号艦)
建造所藤永田造船所
起工日1939年10月18日
命名1940年8月30日
進水日1940年11月1日
竣工日1941年4月25日
主砲三年式50口径12.7cmC型連装砲 3基6門
魚雷発射管61cm4連装水上発射管 2基
搭載魚雷九三式酸素魚雷16本
出力52,000馬力
艦長勝見基中佐(ミッドウェー時)
所属駆逐隊第十七駆逐隊(浦風・磯風・浜風、1944年3月から雪風も)
特記事項ミッドウェー海戦で単艦「飛龍」生存者救援に向かい36〜48機の敵機を回避。クラ湾夜戦で涼風と共に米軽巡ヘレナを撃沈
戦没1944年6月9日 タウイタウイ湾口
戦没原因米潜水艦ハーダーの雷撃。艦首・艦中央部に被雷し轟沈
戦死者114名、救助126名
除籍1944年(帝国駆逐艦籍・第十七駆逐隊・不知火型駆逐艦から除籍)
TIMELINE
竣工から戦没・除籍まで
1939年10月18日 — 起工
藤永田造船所で起工(仮称第30号艦)
  • 同社では他に黒潮・夏・浦風・舞風の陽炎型4隻を建造。
1941年4月25日 — 竣工
竣工。第十七駆逐隊(浦風・磯風・浜風)に編入
  • 4月28日一時第一航空戦隊編入、5月1日17駆に配属。
1941年12月8日 — 真珠湾攻撃
第一水雷戦隊所属、機動部隊を護衛
  • 12月下旬ウェーク島攻略で第二航空戦隊(蒼龍・飛龍)を護衛。
1942年1-4月 — 機動部隊護衛
ラバウル・ダーウィン・ジャワ・セイロン沖海戦
  • 機動部隊の外縁護衛にあたった。
1942年6月5日 — ミッドウェー海戦
単艦で飛龍生存者救援、敵機36〜48機を回避
  • 南雲忠一中将の命で出撃。勝見基艦長の操艦で爆弾の大半を回避。至近弾破片で二番砲塔炎上、6名戦死。艦隊の移乗作業を陰で守った。
1942年8月18-24日 — 一木支隊輸送・ラビの戦い
ガ島輸送成功も先遣隊全滅、ラビ攻略は失敗
  • 海図の誤りで誤揚陸。以後、ガ島鼠輸送に投入。輸送任務中に勝見基艦長戦死。
1942年10月26日 — 南太平洋海戦
以後は南方船団護衛が主任務に
  • ソロモン方面での輸送・護衛任務を継続した。
1943年7月 — クラ湾夜戦
涼風と共同で米軽巡「ヘレナ」を撃沈
  • コロンバンガラ輸送をめぐる夜間水上戦闘で戦果を挙げた。
1944年2月12-21日 — トラック・リンガ移動
トラック空襲で阿賀野・舞風喪失
  • 16-17日空襲。リンガ泊地へ進出後、ダバオ・パラオ・サイパン方面護衛。
1944年3月31日 — 5隻編成
第十六駆逐隊解隊、雪風編入で前例のない5隻編成に
  • 時津風・初風戦没、天津風大破で雪風のみ残存。乗組員の間では歓迎されない声も。5月28日タウイタウイ進出。
1944年6月9日 22時過ぎ — ハーダーの雷撃
タウイタウイ湾口で被雷、轟沈
  • 磯風・島風・早霜と対潜警戒中、900m先からハーダーが魚雷4本発射。2発命中し22:25轟沈。戦死114名、磯風・沖波が126名救助。
1944年6月10-14日 — 事後処理
沖波がハーダーと再交戦、負傷者はバコロドへ
  • ハーダーは同年8月、第22号海防艦により撃沈された。
RECORD
谷風 全艦歴まとめ
陽炎型14番艦「谷風」は、第十七駆逐隊の一員として真珠湾攻撃から戦い抜いた駆逐艦である。ミッドウェー海戦では、単艦で空母「飛龍」の生存者救援に向かい、敵機約40機を一身に引き受けることで、味方艦隊の無防備な移乗作業を間接的に守った。クラ湾夜戦では米軽巡「ヘレナ」の撃沈にも貢献している。しかし1944年6月9日、タウイタウイ湾口での対潜警戒中、米潜水艦ハーダーの雷撃を受け轟沈した。艦長以下114名が戦死、126名が救助された。
見えない貢献の価値——谷風のミッドウェーでの奮闘は、直接的な戦果としては「空振り」に終わった。しかし敵機を引きつけたことで、無防備だった友軍の移乗作業を間接的に守り抜いた。記録に残りにくいこの種の貢献こそ、駆逐艦という艦種の真価だったといえる。

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単艦で敵機を引き受けた艦——「谷風」の意志を、その身に纏え

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■ 参考文献・資料

  • ・防衛省防衛研究所 戦史叢書各巻(南東方面海軍作戦・中部太平洋方面海軍作戦)朝雲新聞社
  • ・アジア歴史資料センター(JACAR)谷風関連公文書・第十七駆逐隊戦時日誌戦闘詳報
  • ・ウォルター・ロード著、実松譲訳『逆転 信じられぬ勝利』フジ出版社、1969年
  • ・相良辰雄「クラ湾夜戦 大砲と魚雷の戦い」『丸別冊 太平洋戦争証言シリーズ1』潮書房、1985年
  • ・宮尾直哉『空母瑞鶴から新興丸まで 海軍軍医日記抄』近代文藝社、1992年
  • ・木俣滋郎『日本水雷戦史』図書出版社、1986年
  • ・Wikipedia「谷風 (陽炎型駆逐艦)」「陽炎型駆逐艦」「磯風 (陽炎型駆逐艦)」「浦風 (陽炎型駆逐艦)」
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