陽炎型6番艦「夏潮」——諸元と全戦歴・竣工からマカッサル沖戦没まで

陽炎型 · 6番艦 · 第十五駆逐隊
NATSUSHIO
陽炎型19隻、最初の喪失艦

陽炎型駆逐艦6番艦。藤永田造船所で建造され、1940年8月竣工。第十五駆逐隊(親・早黒潮)の一員として南方攻略作戦を転戦するも、1942年2月8日、マカッサル沖で米潜水艦S-37の雷撃を受け航行不能に。僚艦の曳航も及ばず、翌9日朝に沈没した。陽炎型19隻の中で最初に失われた艦である。

SPEC
基本諸元サマリー
TYPE
陽炎型 6番艦
DISPLACEMENT
2,033 t
MAX SPEED
35.0 kt級
MAIN GUN
12.7cm × 6
TORPEDO
61cm × 8射線
FATE
1942.2.9 戦没
艦名(なつしお/なつしほ)
艦型・番艦陽炎型駆逐艦 6番艦
建造所藤永田造船所
起工日1937年12月9日
進水日1939年2月23日
竣工日1940年8月31日(親・早潮と同日、第十五駆逐隊編成)
垂線間長111.00m
全幅10.8m
基準排水量2,033トン
出力52,000馬力
速力(計画)35.0ノット級
主砲三年式50口径12.7cmC型連装砲 3基6門(最大仰角55度)
魚雷発射管九二式61cm4連装発射管 2基8門
搭載魚雷九三式酸素魚雷
艦長野間口兼知中佐
所属駆逐隊第十五駆逐隊(親・早黒潮)※戦没時は司令駆逐艦
特記事項陽炎型19隻中、最初の喪失艦。1941年6月の日向灘演習では僚艦「峯雲」の衝突を受け損傷した経歴も持つ
戦没1942年2月9日 スラウェシ島マカッサル沖
戦没原因米潜水艦S-37の雷撃。3缶前部機械室浸水、航行不能となり僚艦曳航中に船体切断・沈没
戦死者准士官1名・下士官兵7名(計8名)、重傷者6名
沈没地点南緯5度36分9秒 東経119度6分6秒
除籍1942年2月14日発令(同月17日公示)
TIMELINE
竣工から戦没・除籍まで
1937年12月9日 — 起工
藤永田造船所で起工
  • 同造船所では僚艦「黒潮」に続く起工だった。
1940年8月31日 — 竣工
竣工。「親」「早」と第十五駆逐隊を編成
  • 初代司令は植田弘之介大佐。呉鎮守府練習駆逐隊として編成された。
1940年11月15日 — 部隊編入
黒潮」編入、15駆が陽炎型4隻に
  • 第二艦隊・第二水雷戦隊(司令官五藤存知少将)に編入された。
1941年6月23日 — 日向灘で衝突事故
僚艦「峯雲」の衝突を受け損傷
  • 演習中の多重衝突事故で「峯雲」の衝突を受けた。
1941年12月8日 — 開戦
ダバオ・ホロ攻略作戦に参加
  • 第二水雷戦隊(旗艦神通)所属、比島部隊指揮下で作戦に従事した。
1942年1月4日〜 — 蘭印作戦
メナド・ケンダリー・アンボン攻略作戦
  • 南方の要衝を次々と攻略した。
1942年2月5-6日 — マカッサル攻略部隊集結
スターリング湾に集結、出撃
  • 前日、僚艦「涼風」がスカルピンの雷撃で大破。船団はすでに連合軍潜水艦の脅威下にあった。
1942年2月8日 22:15 — S-37の雷撃
識別灯点灯中に被雷、航行不能に
  • 悪天候下、船団は識別灯を点灯し相互確認しながら航行していたが、これが敵に位置を知らせる結果となった。3缶前部機械室浸水。
1942年2月8日夜〜9日未明 — 曳航開始
黒潮」による曳航、「親」が護衛
  • この時点ではまだ沈没の懸念なしと判断されていた。
1942年2月9日 07:15 — 沈没の危機
「夏潮沈没ノ虞アリ」と報告
  • 浸水が進行していることが確認された。
1942年2月9日 08:43 — 戦没
曳航状況調査中に船体が中部より切断、沈没
  • 乗員・重要物件は親・黒潮に収容された。戦死8名、重傷6名。陽炎型19隻中、最初の喪失艦となった。
1942年2月14日 — 除籍発令
帝国駆逐艦籍から除籍。司令駆逐艦は「親」に
  • 第十五駆逐隊は黒潮・親・早潮の陽炎型3隻編制となった。
RECORD
全艦歴まとめ
陽炎型6番艦「夏」は、第十五駆逐隊の一員として開戦後の南方攻略作戦を順調に転戦していたが、1942年2月8日、マカッサル攻略作戦中に米潜水艦S-37の雷撃を受け航行不能となった。僚艦「黒潮」による懸命な曳航にもかかわらず、翌9日朝、浸水が進行した船体は中部から折れて沈没した。悪天候下での識別灯の点灯が、皮肉にも敵潜水艦に位置を知らせる結果となったとされる。開戦からわずか3ヶ月というこの喪失は、陽炎型19隻の中で最初のものであり、以後の第十五駆逐隊は司令駆逐艦を「親」に変更して3隻編制で戦い続けた。
快進撃の中の最初の影——南方作戦で連戦連勝を続けていた日本軍にとって、夏潮の喪失は最初の本格的な駆逐艦損失だった。識別灯という味方のための工夫が敵を招いたという皮肉は、開戦初期の対潜警戒の甘さを静かに物語っている。

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陽炎型19隻、最初の1ページ——「夏」の記録を、その身に纏え

「灯りが命取りになった、マカッサル沖の夜」

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■ 参考文献・資料

  • ・防衛省防衛研究所 戦史叢書03・26・46『蘭印攻略作戦/蘭印・ベンガル湾方面/潜水艦史』朝雲新聞社
  • ・アジア歴史資料センター(JACAR)夏潮関連公文書・第二水雷戦隊戦時日誌
  • ・高松宮宣仁親王『高松宮日記』第四巻、中央公論社
  • ・木俣滋郎『日本水雷戦史』図書出版社、1986年
  • ・重本俊一ほか『陽炎型駆逐艦』潮書房光人社、2014年
  • ・Wikipedia「夏 (駆逐艦)」「陽炎型駆逐艦」「黒潮 (駆逐艦)」「親 (駆逐艦)」
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