陽炎型 · 3番艦 · 第16駆逐隊→第15駆逐隊
KUROSHIO 黒潮
雪風とは1週間違いの姉妹、ブラケット海峡で消えた第15駆逐隊
陽炎型駆逐艦19隻の3番艦。大阪・藤永田造船所で建造され、1940年1月に竣工。雪風とわずか1週間差で第16駆逐隊を編成したが、開戦前に第15駆逐隊へ転出。1943年5月8日、コロンバンガラ島輸送任務の帰途、ブラケット海峡で機雷に触れ、搭載魚雷の誘爆により轟沈。僚艦「陽炎」「親潮」も同日戦没し、第15駆逐隊は一日で全滅した。
SPECIFICATIONS
SPEC
基本諸元サマリー
TYPE
陽炎型 3番艦
DISPLACEMENT
2,033 t
MAX SPEED
35.0 kt
MAIN GUN
12.7cm × 6
TORPEDO
61cm × 8射線
FATE
1943.5.8 戦没
| 艦名 | 黒潮(くろしお) |
| 艦型・番艦 | 陽炎型駆逐艦 3番艦 |
| 建造所 | 藤永田造船所(大阪) |
| 起工日 | 1937年8月31日(仮称19号艦) |
| 命名 | 1938年4月15日(陽炎型駆逐艦、同日新設) |
| 進水日 | 1938年10月25日 |
| 就役日 | 1940年1月27日(雪風竣工の1週間後) |
| 全長 | 111.0m(垂線間長) |
| 基準排水量 | 2,033トン |
| 機関 | ロ号艦本式缶3基/艦本式タービン2基2軸 |
| 出力 | 52,000馬力 |
| 速力(計画) | 35.0ノット |
| 主砲 | 12.7cm連装砲C型 3基6門(最大仰角55度) |
| 魚雷発射管 | 九二式61cm4連装発射管 2基8門 |
| 搭載魚雷 | 九三式酸素魚雷 |
| 対空機銃 | 25mm連装機銃2基(竣工時。1943年以降増備) |
| 初代艦長 | 岡本中佐 |
| 所属 | 呉 → 第16駆逐隊(雪風・初風)→ 第15駆逐隊(親潮・早潮・夏潮) |
| 特記事項 | 雪風とはわずか1週間差の竣工で同じ第16駆逐隊を組んだが、開戦前に転出。艦名は戦後、海上自衛隊潜水艦「くろしお」に4代にわたり継承 |
| 戦没 | 1943年5月8日 ブラケット海峡 |
| 戦没原因 | 触雷後、搭載していた九三式酸素魚雷が誘爆し轟沈。僚艦「陽炎」「親潮」も同日戦没 |
BATTLE HISTORY
TIMELINE
竣工から戦没まで
1937年8月31日 — 起工
藤永田造船所で起工(仮称19号艦)
- 大阪の民間造船所で建造された数少ない陽炎型の一隻。
1940年1月27日 — 竣工
竣工。雪風と第16駆逐隊を編成
- 陽炎型8番艦「雪風」の竣工(1月20日)からわずか1週間後の竣工だった。
1941年11月15日 — 転出
第15駆逐隊へ転出
- 代わって時津風が第16駆逐隊に編入。以降、「雪風」とは異なる戦歴を歩むことになる。
1941年12月〜1942年1月 — 南方攻略戦
フィリピン・蘭印攻略戦に参加
- ダバオ、ホロ、メナド、ケンダリー、アンボン、マカッサル各攻略作戦に従事した。
1942年3月 — 空母護衛
クーパン攻略作戦・ジャワ南方機動作戦、空母加賀を護衛
- スターリング湾出港後、座礁で艦底損傷中の空母加賀を護衛して佐世保へ帰投した。
1942年6月 — ミッドウェー作戦
攻略部隊護衛として参加
- 輸送船団の護衛にあたった。
1942年7月20日 — 部隊編入
「陽炎」編入、15駆が陽炎型4隻編制に
- キスカで被害を受けた第18駆逐隊から難を逃れた陽炎が加わった。
1942年8月〜11月 — ガダルカナル攻防戦
鼠輸送・主要海戦に従事
- 南太平洋海戦、第三次ソロモン海戦に参加した。
1942年11月29-30日 — ルンガ沖夜戦
僚艦「陽炎」の重巡撃沈に立ち会う
- 僚艦陽炎が重巡ノーザンプトンを撃沈する戦果に、同じ水雷戦隊の一員として参加した。
1943年2月15日 — 護衛任務
ガ島撤退後、隼鷹護衛でトラック出発
- 悪天候で艦載機収容が遅れ、他艦より1日遅れての出港となった。
1943年6月 — 解隊
第15駆逐隊、解隊
- 陽炎型の艦名区分は「不知火型駆逐艦」へ改称された。
SUMMARY
RECORD
黒潮 全艦歴まとめ
陽炎型19隻の3番艦「黒潮」は、雪風とわずか1週間差で竣工し同じ第16駆逐隊を組みながら、開戦前に第15駆逐隊へ転出したことで、まったく異なる戦歴を歩むことになった。マカッサル沖では僚艦「夏潮」を救えず、ルンガ沖夜戦では「陽炎」と共に戦果を挙げ、そして最期は1943年5月8日、ブラケット海峡で「陽炎」「親潮」と共に機雷により同日戦没した。搭載していた酸素魚雷の誘爆による轟沈は、日本駆逐艦が抱えていた構造的な脆弱性を象徴する最期でもあった。
「雪風とは別の道」——わずか1週間差で竣工し同じ駆逐隊を組んだ雪風は終戦まで生存し、黒潮はその3年前に轟沈した。同じ艦型・同じ竣工時期の艦がたどった対照的な運命は、太平洋戦争における駆逐艦の生存確率がいかに偶然に左右されたかを物語る。
RELATED
ARTICLES
関連記事
- → 【1部】黒潮——雪風とは別の道を歩み、陽炎・親潮と同時にブラケット海峡で消えた陽炎型3番艦
- → 【1部】陽炎——ノーザンプトンを屠り、ブラケット海峡で機雷に散った陽炎型ネームシップ
- → 【2部】陽炎——諸元と全戦歴
- → 【1部】不知火——キスカで艦橋を失い、レイテ沖で早霜を救おうとして消えた陽炎型2番艦
- → 【2部】不知火——諸元と全戦歴
- → 【1部】親潮——夏潮の戦没を引き継ぎ、ブラケット海峡で真っ先に触雷した陽炎型4番艦
- → 【2部】親潮——諸元と全戦歴
- → 【1部】早潮——二水戦旗艦を背負い、フォン湾で僚艦の手に散った陽炎型5番艦
- → 雪風——「雪風に神宿る」甲型駆逐艦38隻、唯一の生存艦
- → 夏潮——陽炎型19隻、最初の喪失艦の全記録
- → 磯風——巨艦の最期を幾度も見届けた陽炎型12番艦
- → 浜風——5,000名を救い、大和と共に散った陽炎型13番艦
- → 浦風——長門を狙った魚雷に散った陽炎型11番艦
- → 谷風——単艦で敵機を引き受けた陽炎型14番艦
- → 陽炎型駆逐艦の全解説——「雪風に神宿る」甲型の集大成と19隻の命運
- → 戦史記事一覧へ
■ 参考文献・資料
- ・防衛省防衛研究所 戦史叢書各巻、朝雲新聞社
- ・アジア歴史資料センター(JACAR)黒潮関連公文書
- ・福井静夫『日本駆逐艦物語』光人社、1993年
- ・ラッセル・クレンショウ著『ルンガ沖の閃光』大日本絵画、2008年
- ・学習研究社『歴史群像太平洋戦史シリーズVol.19 水雷戦隊II 陽炎型駆逐艦』1998年
- ・Wikipedia「黒潮 (駆逐艦)」「陽炎型駆逐艦」